毛玉

哀れなるものたちの毛玉のレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.2
進化、解放

不気味で、どこか居心地の悪くなるようなギャグが大好きな監督、ヨルゴス・ランティモスの最新作。前作『女王陛下のお気に入り』の主演と脚本家と再タッグし、マジカルで皮肉に満ちた解放の物語を描く!

お腹に子供のいるまま自殺した美女(エマ・ストーン)を見つけたゴッド(ウィレム・デフォー)は、解剖学の神様のような存在。ツギハギだらけで人々から恐れられる彼が作り上げたのは、生きていた胎児の脳みそを移植して生まれた美女・ベラだった。美しい姿のまま幼児のような言動を繰り返す彼女は、驚異的な好奇心で日々成長を重ねていく。

純粋なベラが、好奇心のままに世界を冒険し、情報・経験・知識を得てどんどんと成長していく姿が美しかった。ピュアゆえのTPOをど返しした発言には爆笑and感心。子供のふとした発言に「ふむ…」と考えてしまう体験を、何度もしました。
ストーリーとしては、そんな彼女の成長と解放を追いかけていくので、彼女の心の動きを感じる度にこちらも感動してしまいます。彼女が辛いと感じた時には、僕も辛く思ってしまいました。めちゃくちゃ出てくるセックスシーンも、その度にベラが何かを得ているので、そのあとのベラの動きが楽しみになるのでした。

また、なんじゃそりゃ…?と毎シーン思ってしまうような圧倒的な世界観も凄かった。見たことあるようでちょっと奇妙な美術で作り上げられたロンドン・パリなど、本当に面白かったです。その世界の中を、魚眼レンズで対象を追いかけながら、ヌルヌルと動くカメラワークも楽しかった!
胎児の脳を移植された成人女性→思春期を思わせる奔放な女性→医学を勉強する成熟した女性という、えぐい演技のレンジを見せつけたエマ・ストーンはめちゃくちゃ凄かった。個人的には主演女優賞です。

最後には色々なことを受け入れて、解放されて、まだ成長を続ける彼女の楽園に感動and爆笑でした。彼の進化した姿、最高でしたね。アイツの一瞬のカットインの時点で笑ってしまいましたが、完成品はさらに面白かった。
ヨルゴス・ランティモスの不穏でポップな作家性に、エマ・ストーンと脚本家の持つ女性のストーリーへの確度の高さが合わさって、素晴らしい化学反応が起きていました!新年1発目の映画館、本作で良かった!
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