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哀れなるものたちのmyjstyleのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
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舞台はイギリス、産業革命と資本主義が花開いたヴィクトリア朝の物語と思いきやリスボンではロープウェイと思しき乗り物が行き交っていたり、シュールでファンタジックな世界を見せます。博士の屋敷や豪華客船の船室などの、重厚で豪華、でも、独特なテイストがあってアートです。ヒロインは溺死した妊婦から胎児を取り出し、その脳を母体に移植して蘇生させた、いわばフランケンシュタインです。でも、このヒロインは、初めこそ無垢で幼児のような知能の持ち主でしたが、ひとたび外の世界に触れるや恐ろしい勢いで情報を吸収して進化する非凡な知性の持ち主でした。このため、彼女を愛するという男たちの愛が、しょせん彼女を閉じ込め拘束するものに過ぎないと知り、さらには世界には矛盾があると認識するに至ります。無垢なるものが情報を得ることで急速に進化するのはAIに重なります。でも、ベラのようにセックスの喜びは体験できない分、彼女には及びませんね。「哀れなるもの」は束縛を愛と勘違いする男たちであり、さらには、世界の矛盾に気づかない、もしくは、気づいても解決しないものたちのことでしょうか。圧巻はエマ・ストーンの体を張った演技でした。
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