かよ

哀れなるものたちのかよのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
-
ヨルゴス・ランティモスと言えば「パートナーを見つけられなければ動物に変えられる」映画『ロブスター』のイメージなのだけど、その延長線上にある作品のように思った。

胎児の脳を、その亡くなった母親に移植したら、というお話。
見た目は美しい大人の女性だけど、意識も知識も子供なベラは、ゴッドという名のマッドサイエンティストを父として、文字通り箱入り娘として育てられる。しかしベラへの外の世界への興味、“冒険”を止めることはできない。
モノクロの世界から色のある世界に移り、人間の原初的な成長が描かれる。
命に対する子供らしい残酷さは失われ、性に目覚め、知識を欲する。
そうして得た共感性や知識欲につけこまれるのは胸糞悪いが、理解者もいるし、寄り添ってくれる人もいる。

ポリコレを毛嫌いする人がたまにいるけど、ポリコレ以前、のそのまた以前はこう、と感じた。それほど「女性は◯◯でなければならない」「女性は◯◯であるべき」という慣習や常識とされるもの(それはポリコレという言葉が定着する前の“ポリティカリー・コレクト”でもある)を改めて突きつける描き方だった。

中心に性を据えたことに違和感をおぼえたのだけど、町山智浩さんがアメリカ流れ者で、アメリカではまさにその点で論争が起きていると話していた。

そんな映画だけれど、ウナギイヌの実写版みたいのがたくさん出てくるし、ベラの衣裳はかわいいし、ロープウェイも謎にかわいいしで、グロテスクだけど画的な見どころもたっぷり。
オチもすごい。
かよ

かよ