アイスティー

哀れなるものたちのアイスティーのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.2
子供ゆえの残酷さというか、本当のことしか話さないベラの言葉に触れる度に清々しい気持ちになった。
知性を獲得していくにつれ、映像は色づき、ベラの歩き方も表情も洗練され、映像の解像度や彩度は上がっていく。映像、お芝居のグラデーションの緻密さが見事としか言いようがない。
メイクやレタッチだけじゃ、あの児童感は絶対出せないよな。役者ってすごい。

売春宿にて、「女の子達が客を選ぶ方式にしたら?」というベラの提案に、黒人の友が「社会主義の私からも賛成」という台詞や、
船上の青年が貧富の差を目の当たりにしたベラに対して語った、「破滅的な考えや社会主義や資本主義に呑まれてはいけない。現実主義による冷静さだけが唯一確かなものなんだ(うろ覚えだけど)」的なセリフも非常に印象的。

上記台詞にも象徴されているように、この作品は、決してニヒリズムに陥って世界を悲観するわけでもなく、どちらかのスタンスに立って批判するものにもなってない。

現実を正面から見据え、前を向いてひたすらに歩き続けるベラの生き様を通して、結果的に希望を描く、という塩梅が本当に素晴らしかった。
混沌を生きる住人(=哀れなるものたち)が、世界の真実を体感しながら現実を受け入れ、それでも気高く生きようとする姿そのものに勇気をもらえる。

人間の根源的な下品さも確かなる真実なので、R18的要素を入れたことも、エロとは一線を画す必然性があった。肉体と精神両方詳らかにしていく必要があるもんなと、妙に納得。(だから抵抗なく見られたのだなと)

ファンタジックな世界観ながら、その実、めちゃくちゃリアルスティックに世界を眼差している所が最高にクールで、しかもちゃんと笑いも添えているという、これこそ「真の表現」だよなと。

今の所今年見た中で一番好きだった。素敵すぎ!