まや

哀れなるものたちのまやのネタバレレビュー・内容・結末

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

前々から楽しみにしてた作品。映像や衣装、世界観の美しさにとても引き込まれた。ただ、とてもぶっ飛んだ設定なのに、結構大筋が真っ当で当たり前の普遍的なことだからか、何かもっと大きなものが来て欲しいという期待を超えることがなかったのが少し残念だった。(原作があるようなのでそこは仕方ないのかもしれないが)

だが、エマ・ストーンの演技は圧巻で本当にさすがという感じだった。本当に存在することはない登場人物なのに本当にキャラクターが馴染んでいて最初から最後に向けての変貌と成長ぶりは圧巻だった。(きちんと何を得て変化していくのかが見ていてわかるので無理のない成長だった)

男性のエゴによって生み出された主人公だが、そこから作成者の意に反して自身で人生を選択し、自身で突き進んでいく様は見ていて涙が出てきたし、とても純粋で受け取るもの全てをスポンジのように吸収していく様はとても美しかった。

また、受け取った後にすぐ行動に移して常に自分の欲しいもの、やりたいことと行動が直結しているのはやはりどんどん魅力的な人間に成長していくし、周りの男性含め観客をも魅了するのは納得。

だが、娼婦になって自分で稼ぐシーンからは徐々に特異な存在であったのが、下界に降りたというか普通の人間になっていく感じがして、どんどん普遍的なテーマとなっていった。もちろん自身の過去に決着をつけたり、自分の力であくまで生きているのだが、結構当たり前のことでそれに対してそこまでの大きな感情が湧いてこなかった。(自分が今、求めている物語、今、見たいタイミングではなかったのかも)最後医者になる選択も納得だし、最後まで自分で選んで決める人生の美しさを体現していく主人公は素晴らしかったし、人生讃歌の映画として好きだった。だが、そこで終わる感じなのがもっと欲しいと物足りなさを感じてしまった。

多分、キャラクターと世界観のぶっ飛び具合と美しさと気持ち悪さのバランスが素晴らしいからもっともっとと期待してしまったのかなと思った。設定だけに見えてしまった。(周りの男性もクズみたいなのばかりなのもすごい現実的。寓話的物語だからリアルな感じが合わないなと思ってしまった。だが、やはり良い映画は男性より女性が魅力的に映る映画が多いという持論がまた更新された)

特に好きなシーンは初めて世界を見て、圧巻な顔をする主人公と、知識を与えてくれるおばあちゃん(こんな粋なおばあちゃんになりたい)、哲学を教えてくれる男性と会話するシーンだった。

知識って自分でどう受け取り行動するかだし、それによって自分というものが獲得されていくものだと思う。時に自分に寄り添ってくれて、時に自分を守ってくれる。だから、これからも自分自身も自分の知りたいことは自分で経験して知っていきたいし、行動できる自分でいたいと思った。

残酷で美しい世界を寓話的に映し、何事も自分の目で見て、考えて、行動して、世界を見ていきたくなるような映画だった。
まや

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