しん

哀れなるものたちのしんのネタバレレビュー・内容・結末

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

ずっと楽しみにしていた本作。
予備知識0で臨んだが、あまりに良すぎて鑑賞後しばらく放心状態だった。

知性は色気の本質と思い続けているけれど、もはや真理だなと確信した。

教養深くなりたい!と意識して冒険を始めたわけではなく、外の世界をもっと知りたいという純粋な知的好奇心が彼女を作り上げていったのが本当に良い。
自らの審美眼で良し悪しを見極め、取捨選択を続け、どんどん洗練されていくベラを見るのが本当に楽しかった。

歩き方や語彙力(語調)の変化もそうだけど、特に印象的だったのは後半の目くばせ。
ゴッドの家に戻るや否や、プリムから”売女”と小言を言われていたが、少し前までのベラからは考えられないキッとした目つきで鳥肌立った。意思が無いとその目は出来ないのよ…

彼女の知性を目覚めさせてくれたのは恐らくあのご婦人だけど、このご婦人に出会うための乗船切符を掴んだのは彼女の冒険心(誘拐気味だったけど)だから、知的好奇心はいつだって自分を拡げてくれるんだなと再認識した。

また、知識で己をどんどん武装していったベラに対し、自らを省みず現在や過去に執着し続けた彼女の周りの男性陣。
彼らが同じ土俵に上がれるわけ無いのに、それすらも一生気付かず、解決方法も暴力しか知らないのは本当に哀れだなと思った。

ベラの一回目の人生は性格に難があったような描写だったけれど、本当に難があるならきっと飛び降りなかったはずで。
本当に妊娠に絶望したのか、アルフィーの子を孕んでしまったから思い詰めたのか、それとも、元々の彼女も冒険心豊かだったのにそれを抑制されてしまったから未来が消え絶望してしまったのか。

余白を色々想像しちゃうけど、ゴッドに拾われたベラの魂はきっと間違いなく救われたので良かったんだろうな。倫理的には最悪なんだけど。

ほか、姦淫の館のセンターのガラスが絶対にペニスっぽかったのと、ヴィクトリア朝時代っぽいドレスの肩のふくらみが後半になるにつれどんどん小さくなっていったのが印象的だった。
女性性からの開放みたいな意味合いもあるのかな~ってちょっと考えてました。

そして本当に最悪なんだけど、所謂”バカな女性”を好む男性がいるのは万国共通なんだなと悲しくなった。
まともな感性だったら最初のベラ(精神年齢5歳くらい?)とセックスしようなんて思わないと思うんだけれど…
しん

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