緻密に計算された画の構図と丁寧に作り込まれた世界観の素晴らしさの中で、良い事も悪い事も全てをひっくるめての主人公が自分の人生を生きる事、現在を生きる事を描いて行く物語が抜群の面白さ。
全てが素晴らしかった。
物語を観ていて、画の構図と世界観の作り込み具合が抜群の素晴らしさだったし、芸術的でありながら時にポップにエキセントリックに描いていた所が素晴らしかった。
そして人が持つ愛らしさや優しさと、醜さや醜悪ぶりを露わにしながら、その価値観に問いを立てながら描いていたのが最高だった。
最初の方で主人公の立ち振る舞いに違和感を覚えながら観ていたけど、主人公がそこにいる背景を知って思わずゾッとする。
でも後に外の世界に出て、自分を知る事で世界を知って行くその過程に釘付けにならずにはいられない面白さが溢れていた。
会話する中で空気を読まないからこその面白さもあれば、色々と壊して行く物の根深さも感じたりしつつ、その後に繰り広げられるダンスシーンが強引に全てをまとめながら、きっちりキメて行くあの感じが最高だったし、破茶滅茶になって行く展開がとても面白かった。
そして喜びを知る事で自分を知り、世界を知る中での哲学的なやり取りが抜群の面白さだったし、その中で時に粋で痛快な立ち振る舞いをしたりしていた所もあって、観ていてとても楽しかった。
社会を知る事、現実を知る中での悲しみや痛みだとか、人と人の関わりの中で露わになる醜さ、醜悪ぶりを丁寧に描いていたし、人が生きる上で露わにする物、持ち合わせている物をしっかりと描いていたのが素晴らしかった。
思ってはいるけど行動には移せないからこそ、時に無自覚に軋轢を生み出すし、狂っているけど欲望に忠実だからこその魅力的な姿がそこにはあったし、話す中で浮き彫りになるその物事の価値観を問うて学ぶ事、知る事の面白さを体感出来た素晴らしい作品だった。
自分の檻の中に閉じ込めて他人を生かす事の醜悪ぶりが際立つあの描き具合がとても観応えあったし、檻の中に閉じ込めてその命を生かす事は自分の人生を生きる事、その心を蔑ろにしている事を実感せずにはいられなかったし、だからこそあの終わり方には胸のすく思いがした。
物語が終わった後に続くであろうその人生、生き様の続きをもっと観ていたかったし、個人的には現在を生きる事を肯定してくれる映画でもあったので、観て良かったです。
全てが最高でした。