Miver2

マリー・アントワネットのMiver2のレビュー・感想・評価

マリー・アントワネット(2006年製作の映画)
5.0
2007年の劇場公開以来に今回映画館で観たけど、今回の方が断然面白かったな。
大衆の期待に応えようとする姿と、自由奔放に生きる等身大の姿を軸にして、ポップにテンポ良く、スマートに描いて行く物語が抜群に面白かった。

キルスティン・ダンストの可愛さ、衣装や美術の作り込み具合、音楽の使い方、画の構図の素晴らしさを存分に堪能する事が出来たし、人生を謳歌する中で生きる苦さをしっかりと滲ませながら、光と影を感傷的にならない形で描いていたのが素晴らしかった。

キルスティン・ダンストと対になるようなアーシア・アルジェントの演技と存在感が最高だった。
悪女としてのあの場所にいる事の違和感や、周りからの嫉妬、ある種の醜さを持ち合わせながら生きる姿が不思議と魅力的だったな。

物語を観て行く中で夫婦間のすれ違いをさりげなく描いていた所もとても良かった。
一緒に過ごす時間の中で露わになる価値観の違いを特に言葉にせず描いていたのが素晴らしかったし、夫が1番楽しみにしている事を語るその一言は、多分こうだったら愛する事が出来たんだろうなと思ったし、でもあれは現実で言われて気づいたら絶句するしかないなと思った。
あれは残酷だよね...。

しかしながら青春を謳歌するように、人生を謳歌して行く中でのその光景や画の構図の素晴らしさは少女漫画の一コマと重なり合うような素晴らしさが溢れていたし、音楽を語り部にして描いて行くその展開には釘付けにならずにはいられなかったし、心躍らずにはいられなかった。

物語が終わりへと向かって行く中で、政府が他国に向けて自国民に当たり前のように税金を上げる事を決めるその場面は現代社会に於ける日本と同じだなと思ったし、まさかここでこういう事を思うとは夢にも思わなかった。

‪国民の怒りの中で自由奔放に楽しみ生きる主人公の姿を観ていると、現在の自民党は食べるパンがなければ裏金作って食べたら良いじゃない?位の感覚でしかないんだろうなと思ったり。‬
(別にそこに重ねる必要はないのは承知してますが、あえて皮肉を込めて)

その物事の決め方は自分達の面子を保つ為に国民を窮地に追い込んでも平気でいるのは現代社会に於ける日本も同じだし、人生を謳歌する事で破滅へと向かって行くその過程のリアルさがここでこんなに深く響くとは夢にも思わなかったけど、あの終わり方がとても良かったな。

終盤を描いて行く展開で生きる上で必ずやって来るその出来事の悲しみだとか、生きる上での悲喜交々を絶妙なバランスで描きつつ、ポップに色とりどりの世界を描く面白さが溢れていて、様々な芸術を融合させた世界観が最高だった。

‪久し振りに「マリー・アントワネット」を観て、2007年の劇場公開時より2024年の現在に観た方が断然面白かったし、何よりもソフィア・コッポラ監督の世界観の素晴らしさを再認識出来た事がとても嬉しかったです。‬
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