Miver2

刺青一代のMiver2のレビュー・感想・評価

刺青一代(1965年製作の映画)
4.3
仁義と良心を感じる人間模様の描き具合と斬新な色使いと画の構図の素晴らしさは色褪せる事なく、時を超えて改めて楽しめる作品でとても面白かったな。‬
‪そして和泉雅子さんの抱腹絶倒のトークが40分越えで映画共々最高だった。‬

映画冒頭のヤクザの抗争劇を描く所は、殺陣の面白さと思惑や駆け引きの中で繰り広げて行くスリリングな攻防戦に釘付けにならずにはいられなかった。
高橋英樹をはじめとする俳優陣の個々の演技と存在感をしっかりと楽しみながら、描かれて行く物語がとても良かった。

"流れ者"が辿り着いた場所での人間模様は、得体が知れないからこそ受け入れない事や、お互い譲れない事があるからこそ思いっきりぶつかり合って行く、派手にやってくれるあの展開が観ていてとても楽しめたし、一度落とし所が出来ると人と人の関わりを描く面白さを深く感じる事が出来たように思う。

想うからこその純粋な感情はとても愛おしくて、想うからこそ歯車が噛み合わず様々な軋轢を産み出して行く悲しみ、遣る瀬無さが切なくもあったりして。
物語が描かれて行く中で感じられる、人それぞれの良心に思わずグッと来たりしたのがたまらなく良かった。

何よりもクライマックスへと向かって行くその過程での殺陣の撮り方とその構図、あの色遣いの素晴らしさは只々圧巻だった。
現在観ても斬新で、あまりにも見事な作り込み具合に只々魅了されるしかなかった。

序盤での引きのカットに清順監督の素晴らしさを改めて実感したり、赤の色を使って滑らかに次のカットへと繋いで行く場面がたまらなく良かったり、ある種のドス黒さと色鮮やかな所を感じられたりしたのが、今思うと改めて凄まじい作品だなと思ったりする。

最後の戦いが繰り広げられて行く中で、お互いぶつかり合って生きる苦さを味わって来たのにも関わらず、相手を想うからこそ手を差し伸べたり、役目を果たそうとするその仁義にはとても深くグッと来る物があったし、白か黒かではない所での人が持つ良心が感じられる所が最高だった。

愛が溢れているのに、哀愁がより色濃く滲むあのやり取りとその姿を捉えた画がとても深い余韻を残してくれるあの終わり方が改めて良いなと思った。

上映後は和泉雅子さんと轟夕起夫さんのトークショーを。
和泉雅子さんのお話しの弾け具合が最高に面白かったし、本編の時間と同じ位、ずっとお話しされていても良い位とても楽しい時間だったな。

和泉さん、清順監督にあだ名をつけて「ワンタン」って呼んでた話には笑ったなあ。
最初は食べてみないと分からないけど、食べてみたら美味しかった、みたいな例えをした上で清順監督を絶賛していたし、信頼されていたんだなと実感出来た。

元々の「刺青一代」の脚本は違ってたそうで、号外で来た書かれた一言の話には笑ったし、和泉さんを活かした脚本に変えられていた話には笑った(笑)
でもだからこその、「刺青一代」なんだよね。

撮影時のエピソードで和泉さんがなぞなぞ出して、それに答えて当たらないとやらないという話にも笑ったりもして、和泉さんの自由奔放ぶり凄まじいなと思ったりもした(笑)

和泉さんと轟さんのお話しを聞いていて、「刺青一代」は和泉さんの可愛さと粋な感じが最大限に生かされた映画でもあるんだよなと。

あと轟さんのお話を聞いていて、"流れ者"という観点で観る清順監督の面白さを改めて感じたし、清順監督の映画はアウトローな人達を描く面白さが確実にあるよなと思ったり。

和泉さんが俳優になったきっかけや、日活で仲の良かった人達とのエピソード、歌手デビューしてベンチャーズの曲をお経のように覚えたり、テレビ番組に出て途中から口パクで演り終えた話だとか、気がつけばあっという間の40分ちょっと。

最後の撮影タイムでの和泉さんの立ち振る舞いから感じられる、可愛くて愛嬌と気骨ある素敵なお婆ちゃんは姿が最高だったし、長生きして欲しいなと思った。

鈴木清順監督作品の面白さを改めて実感する事が出来たし、出演された方からお話しを聞けるこの貴重な機会をしっかり楽しめて良かったです。
ありがとうございました。
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