キャッチ30

哀れなるものたちのキャッチ30のレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.2
 時代は19世紀後半らしきイギリス。若い女性ベラは胎児を身籠った状態で橋の上から投身自殺を試みる。ゴッドこと外科医ゴドウィンによってベラは川から拾い上げられ蘇生される。それはベラの頭に彼女が宿していた胎児の脳を移植するというものだった。ゴッドは助手のマックスと共にベラを経過観察する。父親から実験を受け続けたゴッドはベラに愛情を注いでいた。やがてベラは外の世界に興味を持ち、放蕩者の弁護士ダンカンの誘いに乗り、大陸横断の旅に出る。

 話の鋳型は女性版フランケンシュタインだ。そこに監督のヨルゴス・ランティモスは奇抜な世界観を絡ませる。ヘンテコな街並みや魚眼レンズによる撮影や覗き込みようなショットは現実離れしている。

 ベラは知力と胆力が並外れている。早い段階で性の快楽を知り、書物や会話、経験から様々な知識を身につけていく。するとどうなるか。歩行や発語さえおぼつかなかった彼女は早い段階で成長していく。ベラは因習に囚われることはない。着ている服もミニスカートにブーツと現代的だ。ダンカンはそんな彼女に振り回される。ベラに色目を使う男たちに嫉妬に駆られ殴りかかったりと賢くなっていく彼女とは対照的に愚かな面を見せていく。

 エマ・ストーンはベラという難役に体を張って挑む。恥や外聞があっては辿り着けない領域だ。夫と名乗る男と対峙する場面は緊迫感が上がる。また、マーク・ラファロの好演も捨てがたい。老婆を船に突き落とそうとする場面はどこか可笑しい。題名の『哀れなるものたち』とは女性らしさを封じ込めようとする男たちのことかもしれない。