とみー

哀れなるものたちのとみーのネタバレレビュー・内容・結末

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

ベラを観察することを通じて現代社会に蔓延る様々な問題を風刺し提起していた。要素が多いとまとまりのない作品になりがちだが、一貫して「性」を主題にしていたので観客も混乱せずに観ることができる。

ベラの成長が、序盤白黒で魚眼レンズ越しのぼやけた世界だったのが後半に行くにつれて色がつき、正確な映像になるという点からも読み取れる。

博士は創造主であり永遠の愛であり人である。名前もGodであり、三位一体の神を体現していると感じた。

博士もヴィクトリアの夫も同じように彼女を監禁しようとするが、前者は父性による保護欲で後者は支配欲である。この対比が興味深かった。

一緒に観に行った人が、これはヴィクトリアが自殺する前に見た妄想なのでは?と言っていて確かにと思った。最後になってようやく登場した夫に手際良く復讐を果たす姿は、家父長制に対する女の権利の確立を表してはいるが、実際には叶えることができなかったという暗示にも思える。
また、博士の家や世界旅行中の海、島などは現実離れしたファンタジックな姿をしていて、ベラのファッションもこの映画の時代設定には合わないパリコレのような見た目である。それに対してヴィクトリアの家の中だけあまりにも現実的で面白みに欠けている。

オープニングとエンディングに流れる映像には何か意味があるのか気になった。
そして、パリの雪の中に佇むエマストーンがとても美しくて圧倒された。