アキラナウェイ

哀れなるものたちのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
5.0
頭の中の思考という名の回路の繋がり方が、常人とは違うんだろうなと毎度思わせてくれる奇才ヨルゴス・ランティモス監督最新作。

天才外科医ゴドウィン・"ゴッド"・バクスター(ウィレム・デフォー)の手により、橋から飛び降り自殺をした妊婦の、生存していた胎児の脳を妊婦に移殖して蘇ったベラ(エマ・ストーン)。ベラは日々多くの語彙や感情を覚え、次第には性の歓びをも覚えていき—— 。

手足の動きもぎこちなく、まるで子供のように無邪気な言動。好奇心が旺盛で、日毎に成長していくベラという魅力的なキャラクターをエマ・ストーンが見事な演技力で魅せてくれる。そんな彼女に目が釘付け。

マッドサイエンティストであるゴッドが創り出したのはベラだけではない。アヒルの頭部に犬の身体といった具合に奇妙な組み合わせで縫合された生き物達。そんな奇妙奇天烈なクリーチャーを眺めている内に、自分が既にヨルゴス・ランティモスの脳内に一歩踏み込んでしまった感覚を覚える。

ちぐはぐ。

この作品で描かれるベラも生き物達も、何もかもがちぐはぐ。

モノクロで描かれていた映像が、カラーへと切り替わる。調子の外れた音楽は次第に美しい旋律へと移り変わる。ベラの振る舞いは次第に落ち着いていく。

そう、これは全てが整っていく物語。

然し乍らタイトルが示す通り、哀れなるもの達を取り扱った作品であるからして、その整い方も、決して清く・美しくとはいかないのだ。

ゴッドは医学生の助手マックス(ラミー・ユセフ)にベラとの結婚を勧めるが、結婚の契約のために家に上がり込んだ弁護士ダンカン(マーク・ラファロ)はベラに惚れ込み、彼らはリスボンへと駆け落ちしてしまう。

リスボンへと旅立ってからの世界観が、カラフルでメルヘンチックで美しい。魚眼レンズで覗き込んだようなカメラワークも良き。

性に目覚めてからのベラはひたすらに男達との情欲に耽るように。あまりに多いSEX描写に辟易とするが、エロスというより、その性行為すらも男女の滑稽な重なり合いとして描いているのが特徴的。

リスボンに留まらず、アレクサンドリア、マルセイユと世界中を旅していく内に、過酷な労働を強いられる貧しい人達や売春宿に通う男達を目の当たりにするベラ。

純真無垢なベラの目を通して映し出されるのは、哀れなるもの達=我々人類の愚かに醜く歪んでしまった世界。

逞しく成長したベラによる復讐劇として迎えるラストは、爽快感と小気味良さすら覚える見事な幕引き。

エンドロールで映し出されるアレコレは、どれも性器を彷彿とさせるもの?そして、何の説明もなかったけど、食事中にゴッドが吐き出す泡は何なのよ。

いやー、これは完全にヤラれた。
唯一無二の世界観に乾杯(完敗)である。

常人離れした動き、奇妙なダンス、スポーティーなSEX、そして聡明な女性へと成長し切ったラストまで、ベラを魅力的に演じ切ったエマ・ストーンに敬意を表してスコアリングは満点で。