Rio

哀れなるものたちのRioのネタバレレビュー・内容・結末

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

これは面白かった、、。長編にも関わらず飽きさせないストーリー、魅せ方、演技など、先が全く読めない展開に只々観入っていった。

◾️ストーリー
「旅を通じて新しい自分発見」とか「やっぱ旅はいいよね!」的なストーリーだと思っていたけど、全然異なるメッセージ性をはらんだ、むしろディープなテーマをもつ作品だった。それが逆によかった。

ただの脳手術ではなく、実は移植。
またそれが我が子というのが重く、そこに存在するすべての登場人物が「どういう感覚を感じているのだろう」というところから悍ましさと興味を持つ。

ゴッドは実験的であり、非人道的なことをしているかもしれないが、エマにとっては最後まで大事な存在だし、ゴッド自身にも愛があった。

猟奇的であり美的、感覚的、人間的といろんな感性を刺激してくれることが何より楽しめた要因。1番は性的な事柄を哲学、人格形成のひとつとして扱うのが面白い。ただかなり性描写が多いので見方(誰ととかいつとか)は気をつけたほうがよき。

◾️エマの挑戦的表現
幼児から始まり覚醒した成人までの演技はとにかく圧巻。そして、かなり攻めた印象。

知的好奇心をくすぐられる人を客観視するのが、新鮮だった。(見ている自分が体験しているのでなく、それをしている人を観る感じ)

また、その過程も面白い。多感な時期はいろんなことを知る楽しさや喜びが全面にでているが、経験を積むことにより知ることの恐怖、ショックを味わう。これを何回も繰り返し、いろんな感情の芽生えを認知し、落とし込むことで人格が形成されていく流れを体感する。
(感覚や本能を主とする幼年期から理性を軸とした大人に変わっていくのか的な)


◾️魅せ方
・撮り方も作品に入り込む要因の一つ。
詳しいことはわからないけど、カメラワークやその種類の多様さが世界観を表現するうえでのスパイスになっていた(そこに付いているバックミュージックも良き。特に白黒の世界のときに流れる明るい音なのに調律がズレてる雰囲気の曲が世界観を示していてお気に入り。サントラ聞こうと調べてたら「見たことあるこのキャッチーなジャケットはこの作品のだったのか!」となる)

あと、オズの魔法使いを思い出させるような白黒とカラーの表現。世界が開かれ感情や知的成長を色で表すのはわかりやすくイメージしやすくてとても好き。

・また、その色の表現をエマの服装で表すのもかわいい。世界の表現だけでなくパステル→クラシックな色やデザインの推移は観ていて飽きない。

・個人的には場面展開の時に入る挿絵的な動画もエマの成長や心境を表現していて好きだった。

→総括として、「性」というものによっては触れづらい手法でメッセージ性を体現するのがとにかく面白かった。あと単純にエマの成長が「そっちにいくのか」的な良き裏切りがあって楽しめた。
最終的に覚醒し切ったブレない立ち姿と知的なんだけど凡人とは違う変態的思考に引き込まれた。なんかどっか既視感あるな、、と考え続けた結果、自分の中ではハンニバルレクターに近いことが満足感の決定打になった。
Rio

Rio