ベビーパウダー山崎

哀れなるものたちのベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
2.5
自宅から飛び出したエマ・ストーン、これから物語が動き出すのを期待するが、展開ではなくキャラクターの成長で映画を積み上げているので、そこまで跳ねない。成長は過激な描写の受け皿にもなる。どれだけセックスを映しても、これは成長への学習ですからという言い訳にもなる。
ヨルゴス・ランティモスは箱庭でしか世界を描けないので、どこに逃げても冒険とは名ばかりの内省を穿るばかりで、そもそもをエマ・ストーンの『女の一生』として見ても社会との繋がりがあまりにも弱く、つまりこの映画は対立を避け、「戦争」が欠けている。
野生の少女の成長は自立ではあるが、だからといって向こう側に行こうとはしない。スタート地点に戻り、その限られた閉鎖的な場で己が心地よい(狂った)世界を創造していくラスト。ランティモスにとって、外部との接続は恐怖でもあり悪、自分のテリトリーでの「ルール」がすべて。