画面を見ているだけで楽しいという純粋な映画体験。これだけ色々な映像表現が溢れている現代において、初めて見ると思える映像(人物にだけフォーカスされており背景のみ魚眼のように円形に歪んだ画面、チャプターごとの動く挿絵、コントラストの強い色彩で描かれる時代不明の街の景色など)を発明するってどんだけすごいんだ。そしてこれは単なるこけおどしではなく、初めてのものを発見していくベラの視覚的快楽を追体験するという意味でも必然性のあるやり方だと言える。画面作り、美術、音楽、すべてにおいて全く新しく、どれも完成度が高い。個人的には、ギリシャの監督が作った映画で哲学が語られるシーンには身構えるものがあった。