のんchan

シチリア・サマーののんchanのレビュー・感想・評価

シチリア・サマー(2022年製作の映画)
4.0
キラキラ煌めくジャケ写と邦題からすると、よくありそうなBLなんだろな?と決め付け気味だったけど違った。

これはイタリア・シチリア島で1980年に起きた悲劇の実話『ジャッレ事件』(未解決)が基になっている。
原題はコルシカ語で『Stranizza d'Amuri』(愛の奇妙さ)、戦争中の叶わぬ恋を歌った歌のタイトルでもある。


1982年、初夏の日差しが降り注ぐシチリア島の長閑な農道で、17歳のジャンニと16歳のニーノはバイクの接触事故を起こす。
ジャンニの意識を戻すため、必死でマウストゥーマウスをするニーノ。これが出会いだった。

ジャンニは母親と内縁の夫と3人暮らし。同性愛者であることを町中に知られ、男たちから"ジャンニちゃん"と揶揄されイジメられていた。しかし芯の強さのあるしっかり者。
ニーノは花火師の父親、料理の上手な母親、姉とその息子の家族。叔父も近くにいて親族の多い仲良し一族だった。素直でとても優しい性格。

環境も性格も違う2人だが、だからこそ惹かれ合い、瞬く間に激しい恋へ、2人だけの世界へ邁進する。しかし、その関係はある日突然終わることになる...


南イタリアはカトリック。完全なる男性社会。女性は未婚で肉体関係を持つこと、人妻の不貞、そして同性愛などは完全タブー。発覚すれば一族にとって恥で不名誉となる。何らかの社会的制裁を受けることがあった。

ジャンニの母は今のパートナーを愛していない。生きていく為に耐えている。不幸を背負ったような意味深な女。ジャンニに冷たく当たる夫から息子を守りたい一心で2人の絆は強い。2人で踊るダンスが印象的。

実話を調べたら年齢や事件内容がかなり違っていて、映画は上手く脚色されているが、敢えてなのか?曖昧な描写も多い。
エンドロールでショッキングなことを知ることになるが、『ジャッレ事件』を機にシチリアにゲイ保護団体が創設された。


2人の俳優は違うタイプでどちらもド級のイケメン。
いやらしさはなくひたすら美しいのでお薦めです。
のんchan

のんchan