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キャメラを持った男たち 関東大震災を撮るのsayuriasamaのレビュー・感想・評価

3.8
100年前、カメラを持っていた男たちの行動と心理

関東大震災が発生した1923年9月1日から100年を迎えた日に作品を観ることができました。ドキュメンタリーということで、もっと悲惨な内容になっているかと思ってましたが、「関東大震災に襲われた東京の下町」を撮影した3人のカメラマンの足跡をたどりながら、メディアアーカイブの重要性や心理について整理された、なるほどと新たな視点を学ぶことができるドキュメンタリーでした。

100年前のカメラマンとの対比で、東日本大震災の津波の映像を収めた釜石のテレビクルーの方のインタビューもありました。また、関東大震災の映像も、京都の撮影所でいち早く現像され、映画として公開され、評判を呼んだそうです。カメラマンの方々の心理として、今も昔も「いい画を撮りたい」というカメラマンの心情から、半ば我を忘れてカメラを回すことで貴重な映像が残されているという点は幸運である反面、現在では誰もが高性能のカメラのついたスマホを所有しているので、いわば国民総カメラマン状態であるうえ、情報発信やコピー、はたまたAI合成なども容易にできる世の中であります。
これからの災害時のメディア、そしてアーカイブの利点、問題点など、平時に少しでも考えておくべきポイントもいくつか見つかり、有意義なドキュメンタリーでした。

おまけ:関東大震災と関係なく、国立映画アーカイブの倉庫の様子や、地道な研究、戦前の日本映画スタジオの歴史を知りたい人にもお勧めします。サイレント映画にもより関心が持てるようになり、また、日活向島撮影所のことは今回初めて認識しました。
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