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HOW TO HAVE SEXのVisorRobotのネタバレレビュー・内容・結末

HOW TO HAVE SEX(2023年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

フォーラム仙台で見た。

1に海外の青春(性春を含む)映画(『スーパーバッド 童貞ウォーズ』とか)が好きであり、2に予告編から何かバッドな仕掛けがあることを予感したからであり、3に最近よく聞くSignポッドキャストの有料エピソードで扱われる予定だったからである。

実際見た感情としては、1の期待に沿った映画ではなく(ハッピーな空気感やティーンムービー的な成長はない)、2の予感には確かに寄り添ったものではあるものの特にケレンのあるサプライズはなく、3は結局まだ聴いていないという状況である。

<ストーリー>
16歳にして嗄れ声で酒、たばこ、ジョークが大好きでいうたら主人公タラが親友スカイとエムとギリシャ・クレタ島のマリアリゾートへ高校卒業旅行に出かけて、「ぜったいにこの度でヤる!」などと意気込むが・・・。

映画を見るまでは大学生処女3人がコンプレックスを抱えて旅行に行って・・・といった童貞ウォーズ的な設定なのかと思ったが、主人公連中は16歳で処女なのはタラだけだった。

タラは日本の芸能人でいうとまさにフワちゃんみたいなキャラクターであり、2024年8月5日時点でX上はフワちゃんが同じく芸人のやす子を罵倒するような投稿を間違って本アカでしてしまった話題で持ちきりなのだが(俺のTLのエコーチェンバーかもしれないが)、まさにそういう馬鹿元気陽キャキャラのヤンキー娘も心から単純なわけがなく、闇や傷を抱えていますよという話であった。

タラは旅先で出会った金髪男のバージャーと明らかにフィーリングが合っているのだが、その親友のパディと雰囲気に流されていたしてしまう。

タラの親友スカイの立ち回りがその伏線として効いており「飲み会の告白ゲーム(海外の若者映画でめちゃくちゃよく見かけるが、全然面白くなさそうなアレの変奏形)」の流れでタラが処女であることをほのめかしたりだとか、「バージャーは絶対やめた方が良いよーだって不細工じゃん」とタラのフィーリングを崩したりだとか、どこか意地悪である。

パディ(Samuel Bottomley)との行為は作中で2回ある。一回目は「いいよね?」と同意を取っているが、2回目は寝ている振りをしているタラに対し半ば無理やりであり。実際映画のラストでも「寝てたのに…」とタラが嗚咽し、性被害ってこういう形で起こるんだろうなあとも思わせるが「1回OKもらったし2回目はいいんじゃないか」というパディの心理も理解できるのが難しい。

いや、難しいというのもそれ自体性被害に遭うことを想定していない側の無理解だと非難されそうだなあとは思うのだが、でも実際のとこどうするか?というとあの状況でああやっちゃったパディが悪人として描かれているわけでは決してないはずだ。

要するに本映画は苦々しい初体験のマーありそうな思い出をリアルに映画化しただけの話なのだが、ひとりだけ留年しそうなタラの前途が暗いことも含め、こういう機序でものすごく傷つくことはありうるし、たとえばアンセルエルゴートに対する2020年6月の性被害の告発もこういう流れだったのかなあと想起した。

性被害と苦々しい性交にまつわる思い出の線引きはどこにあるのかと考えさせる点で、こりゃ確かにある視点部門だね。

※本作はカンヌの「ある視点部門」を受賞
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