名波ジャパン10

憧れを超えた侍たち 世界一への記録の名波ジャパン10のレビュー・感想・評価

4.3
素晴らしいスポーツ・ドキュメンタリー。
最近のスポーツ・ドキュメンタリーは「ロストフの14秒」や「三笘の1mm」の様に劇的なスポーツシーンをプレーヤーなどのインタビューで解析するというマニアックな傾向を強めていますが、本作品はインタビューは無し、解説・分析は無し、ひたすら選手の実際の言動を拾って綴っていくというものです。そして、劇的な展開やエピソードに溢れたWBCでの戦いでしたが、試合そのもののドラマに焦点を当てるのではなく、それを戦う監督・コーチ陣、選手達の一人の人間としての姿にスポットを当てています。中国戦でニ塁打を放った後ベンチ裏で本塁打にならなかったことを悔しがり、イタリア戦先発のマウンドに向かう前、緊張を隠せない様子の大谷翔平。チェコ戦で小指が反対側に折れ曲がっているにも拘らず痛み止めを飲んで「行けます」とうわ言の様に繰り返す源田壮亮。準決勝メキシコ戦で3ランを浴びての降板後ベンチ裏の通路で涙する佐々木朗希。決勝戦勝利の瞬間自らグローブを投げ捨てたにも拘らず、歓喜の輪の中で「僕のグローブは?」とグローブを探す大谷翔平。TVでは放映されなかった選手の等身大の姿は、グラウンドの外での選手自身の自らとの葛藤を描いており、WBCの感動をより深く再現してくれています。WBCの感動の余韻が残っている方必見の傑作です。