名波ジャパン10

人間の境界の名波ジャパン10のレビュー・感想・評価

人間の境界(2023年製作の映画)
4.3
ベラルーシ政府はEUに混乱を引き起こす狙いで大勢の難民をポーランド国境へと移送する<人間兵器>とよばれる策略を実施している。これに対してポーランドの国境警備隊はこれらの難民を収容することなくベラルーシに押し戻し、ベラルーシは再びポーランド側に追い立てる。まるで互いに廃棄物を投棄するかのように国境越しに難民を押し付け合う描写は、実際の難民や関係者に取材して再現したものである。ベラルーシ、ポーランド双方の国境沿いでの非人道的な蛮行がモノクローム映像であたかもドキュメンタリー映画を観ているかの様な迫力で繰り返され、思わず眼を覆いたくなる。シリア難民家族の老人はひたすら神に祈り続けるが、神の救済は訪れない。ポーランドの人権保護団体の難民救済活動は国家権力に無惨に打ち砕かれる。ポーランドの暗部を暴いたこの作品は国際的に高く評価され、ポーランド国内でもポーランド政府の様々な妨害活動にも拘らず、異例の大ヒットを記録したという。映画の持つチカラを実感させられる作品。