dai

憧れを超えた侍たち 世界一への記録のdaiのレビュー・感想・評価

1.5
前提として、観賞する方々の野球に対する関心や知識等に依る所が大きを占めるかなと
あくまでもその点は斟酌した上で述べる次第

その点を含んでも、一編のドキュメンタリーとして観ると掘り下げ方が甘かった、否、甘過ぎると言っても過言では無いかと

端的に言えば試合のシーンが多すぎる、今ならばYouTubeで全試合のハイライトは余さず観られる訳で、そこにフォーカスする必要は果たしてあったのかと首を傾げざるを得ない
メキシコ戦にて打ち込まれ降板した佐々木投手の描写を含めても表面的な切り取りに止まっている

例えば
・他の優秀な選手を押し退けてヌートバー選手を代表に選出するに至ったプロセス
・大谷-ダルビッシュ-佐々木-山本のローテーションは決まったものの、決勝戦の先発に今永選手を選び抜いたプロセス
・決勝は総力戦、というのは勿論だが、戸郷投手、高橋宏投手、伊藤投手、大勢投手という、国際大会の経験が薄い若武者のリレーで凌ぐ決定プロセス

ザッと挙げても上記のプロセスの描写が全く抜けている点は、野球ファンとしては片手どころか相当なポイントが脱落していると言わざるを得ない

比較対象として、岩井俊二監督の「六月の勝利の歌を忘れない」という、2002年の日韓W杯サッカー日本代表の裏側に迫った傑作ドキュメンタリーを観れば一目瞭然ではあるが、其方では、例えば控えに甘んじる若き日の小笠原選手とコーチの絡み、宿舎での小野選手のビリヤード技術及びコミュニケーション、プールにダイブする選手達、何故それまで代表に召集されなかったゴン中山選手や秋田選手が必要だったのか、国を背負うプレッシャーに晒されつつも、彼等の等身大を丹念に描写し、チームの結束に寄与したかという点を丹念にカメラで捉えていたからこそナレーションなぞ一切無くとも名作となり得たと考えている

個人的な視点になってしまうが、一例を挙げれば、甲斐捕手や中村捕手の影に隠れて、実力は確かではあるが出番の薄かった大城捕手や、ボールにもう一つ順応出来ず苦渋を飲んだ松井裕樹投手という一流の選手達にも、彼らが過ごしたWBCの物語があった筈だ

今回の素晴らしい代表を引っ張った選手にフォーカスされるのはむべなるかなとは思うが、それだけで全編を貫くのはドキュメンタリーとしては陳腐と言わざるを得ないというのが(あくまでも一野球ファンとしての)所感として声を上げたいと思う次第
dai

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