DON

クエンティン・タランティーノ 映画に愛された男のDONのレビュー・感想・評価

-
タランティーノにとって、映画=虚構とは現実逃避ではない。いや、むろん最初はそうだっただろう。映画を愛するものにとって、それは誰もが通る道だといっていい。

だが、『イングロリアス・バスターズ』以降に展開される「歴史改変もの」の作品群が顕著であるように、映画=虚構はいかにして現実の軛を逃れ得るのか、現実に対峙し拮抗するものとして表れている。その認識の背景に、嫌悪し逃避するものとしてではなく、ただ厳然と揺るぎないものとして現実を捉えているタランティーノの成熟を見ても間違いではないだろう。

現実=歴史は揺るがない。しかしだからこそ、映画=虚構はどこまでも自由に飛翔できる。

「ニガー」という台詞をどうしても言えなかったディカプリオの躊躇いと重みこそが、タランティーノ映画の原動力に違いない。
DON

DON