垂直落下式サミング

ザ・クリエイター/創造者の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

ザ・クリエイター/創造者(2023年製作の映画)
4.5
お寿司屋さんの湯呑みに書いてある字みたいな書体のエンドクレジットが最高だった。渡辺謙だけ漢字。ギャレス・エドワーズ・フィルム!どどんっ!
最初、A.I.技術が進歩した世界の疑似歴史ニュース映像のザッピングからはじまって、畳み掛けるような情報量のなか爆弾が落ちて地響きがすると、次の瞬間急に無音になりタイトル。
『ゴジラ』のオープニングそのまんまじゃねえか。芸がないのか作家性なのか。なんにしても、僕はギャレス・エドワーズ監督が「気持ちいい」と思っている映像表現のテンポにゾッコンなので、もっともっといっぱいこんなのを作ってほしい。寡作なのが玉に瑕。毎年、よっギャレス屋っ!と叫ばせてほしい。
本作は、監督の集大成的な趣。ケレン味の出し方はゴジラで、異国情緒ロードムービー風味はモンスターズ、メカのフェティッシュと恥ずかしがらずベタな泣かせに振り切る肝っ玉はローグワンってな感じ。それに、ここまでの監督作ぜんぶ「家族に会いたい人のはなし」だってのも、最近振り返ってみて気づいた。映像派だと思われがちだけれど、明確に描きたい物語のある作家である。
しかし、こんなに金をかけたインデペンデントっぽい映画をこのご時世にみられるとは。わかりやすいスターは出ていないし。デンゼルワシントンの倅は最近売り出し中だけど、あんまパッとしないし。
こんな手塚治虫みたいな世界観を、令和に大マジメにやる海外ニキがいるなんて。角張ったところのないレトロさで、リアリティーはあるのにどこか牧歌的。A.I.ものってあんま好きじゃないんだけれど、この世界観はしっくり来る。
ロボも人間も等価に死んでいくから、めちゃめちゃ悲しくて泣いた。敵にロックオンされてもう助からないから、子供を巻き込まないようにミサイルを遠ざけて死んでいくロボットと、砕け散るパーツをみて泣き叫ぶ子供。情緒的センスオブワンダー。
最初らへんの、ネアンデルタール人はなぜホモサピエンスに滅ぼされたか云々のセリフは、サピエンス全史ネタかな。僕は雑学王インテリなのでわかりました(不遜)
エスエフの皮をかぶっているとはいえ、アメリカが実際にやっていることを告発しちゃうのは流石。白人中心主義への痛烈なアンチテーゼなのではないか。
根絶か共生か。自分から遠い異質なものたちとコミットせよと、多文化共生を啓蒙する意識高い系電波をビンビンと受けとることができる。異国情緒にかぶれた欧米人はたくさんいると思うけど、本当に真理に近いものは白人文明の理解の外側にあるって、ガチでそう信じている人は少ないんじゃないかな。自己のルーツに敬意を払う心、そこを否定してもいけないと思うし。
ゆえに、最後の展開は非常にキリスト教というか西洋哲学的。打倒すべきあの兵器のカタチが、もうなんつーかでっかい子宮にしかみえないし、そこに長細くとんがったシャトルで乗り付けていくことで、無垢の子供だったアルフィは父と母の愛を受けて、下にのびた二本の棒みたいな産道から落っこちることで、救世主として地上に産まれることができたとさ。めでたし、めでたし。