本好きなおじぃ

バジーノイズの本好きなおじぃのレビュー・感想・評価

バジーノイズ(2023年製作の映画)
3.9
清澄は、好きな音楽を続けるためにマンション管理人をしている。人と関わらず、自分の好きな音楽を突き詰める。それでいいと思っていた。
ある時、マンション階下の住人・潮が清澄の作る音楽に興味を示した。潮から聴きたい、そう示された清澄は素直に受け止め、またマンション管理会社から音楽についてとがめられ退去しなければならず、潮の部屋へ飛び込むのだった。
潮は清澄の音楽を気に入って、ふとSNSにアップいたところ大バズり。その中で、昔バンドをやっていた陸と再会し、そして一緒にセッションする中で再びバンドを組むことになる。やがて、陸のもともと参加していたバンドのプロデューサーだった航太郎のつてで、レコード会社へ清澄を紹介したところ、高く評価されて―――

音がグンと入ってくる。
マンションで鳴らす、清澄の打ち込み。
海辺で鳴らす清澄の打ち込みと、波や自然の音。
ライブで鳴る陸のベースと清澄のシンセサイザー。
数えればきりがないが、カギになる音はどれもその場にいるような。特にライブは、そのライブ会場にいるような。そのくらいビリビリと鼓膜を鳴らす。
それだけ、音がカギになる映画であるし、それを大事にした証なのだろうと思う。

潮が本当に楽しそうに清澄の音楽を聴く。
桜田ひよりさんが奔放で楽しそうな演技をしているのがいい、ということもあるけれど、その様子を見て、清澄も嬉しかっただろうし、我々も音楽を聴きながら楽しい気持ちになる。清澄役の川西拓実さんの打ち込みの姿も、とにかく没頭し、真剣で自分の世界にこもっている様子が素敵だった。そのこもっている、あるいはこもっていた清澄が、潮の登場によってどう変化していくのか。
川西拓実さんと桜田ひよりさんの正反対の役柄のコンビがどのように変わり、そして変わらないのか。いつか住民から「うるさい騒音だ」と言われた音楽が、どう育っていくのか。
じっくり音に注目しながら、二人の音楽を求めた先を観ていきたい。