本好きなおじぃ

ミッドサマーの本好きなおじぃのレビュー・感想・評価

ミッドサマー(2019年製作の映画)
3.2
パニック障害を抱えている大学生のダニーは、あるとき、両親と妹とが集団自殺してしまう。また、彼氏のクリスチャンとはあまりうまくいっていない。そんな中、卒業研究の一環である国の山奥へ行き、その村で行われる90年に一度の祭礼へ参加することになる。
そこはホルガ村と言い、仲間のペレの故郷。そこに、ダニー、クリスチャンの他に、ジョシュとマークもあわせて向かう。

この村では、いわゆる夏至祭が、1週間にわたって行われる。
内容をペレからも知らされない4人だったが、だんだん普通の祭りと勝手が違うことがわかってくる。
代表らしき人が食べ始めないと食べ始まらない食事会、奇妙な形のテーブル、そして、ある一定の年齢になると死ななければならないしきたり――
ダニーは早く村を出たいというが、ジョシュとクリスチャンが研究を行おうとするためにその場にとどまり続けることに。

すると、同じく他国から来ていたクルーの一部がいないことがわかり、さらに不穏な叫び声と誰も見ていない残りのクルー。そのクルーは駅まで確実に送り届けた、と村人は証言するのだが、いったい。

この作品は、スリラーの類のホラー映画ではない。
Wikipediaにはサイコロジカルホラー、と書いてあるのだが、サイコパスというよりも、自らがサイコパスであるということに気づかされない環境であると推測される点ではヒューマンホラーに分類されても良いだろう。
それこそ、大昔の文献に書いてありそうな、求愛のための行動。例えばベッドの下にあった呪物とタルトに入っていた毛のようなものと一人だけ赤いジュース。こういったものが平気な顔で登場するこの映画の演者は、いったいどういう気持ちで臨んでいたのか気になる。少なくともわたしは、みていて胸糞というか、辛かった。

また、「泣く」と言う声が効果的に使われているのだろうと感じた。
「鳴く」に近いのかもしれない。苦しんでいる人や死者に対する敬意というか、そういう意図でその行動を取っているというのもわかるだけに、この人たちは純粋にその教義を信じているのだ、と思うしかなくなるし、「泣く」ダニーも、本当に自分が泣いていることがなにか、わからなくなっているのではないかと思った。

一定の年齢で命を絶つしきたりのあたりから、「なんだかおかしい」と感じるのであるが、はじめにマジックマッシュルームを食べた時のダニーの、ぐわんぐわんしている感じの映像を伏線として、いよいよここからやばいことが起こってくるんだ、と感じざるをえない。
ただ、目をつぶれるかというと、そうではない。思わず見てしまうのは人間の性だろうか。その点で、我々の黒い人間性を浮かび上がらせる映画、なのかもしれない。