義民伝兵衛と蝉時雨

ブレインウォッシュ セックス-カメラ-パワーの義民伝兵衛と蝉時雨のレビュー・感想・評価

4.4
映画の中をも根深く支配する男性の眼差し。殆どの映画の中で、映し出される女性は、男性の頭を通したものであり、セックスシンボルであり、性的快楽という客寄せパンダであり、あくまで性的搾取の対象から抜け出すことができていない。これは映画娯楽の核に深く溶け込んでいることであり、サイレント期はそうではなかったが、トーキー映画の発足と共に、映画業界の経済至上主義も膨れ上がった結果、集客の為の必須の条件の一つとなった。それを助長したのは紛れもなくハリウッド映画であり、映画業界は無自覚のままにレイプカルチャーとなっていった。それは近年増えつつある女性映画監督自身の作品自体をも知らず知らずの内に頸木にかけている。最悪の場合では、芸術映画の皮を被った俗悪さえも見受けられる始末。男性中心主義の社会に蔓延る無自覚の偏った視点、社会に蔓延る無自覚の性的暴力の氷山の一角。商業主義のハリウッド、そして経済至上主義の社会が、蝕む女性の心や尊厳。資本主義社会、客体=物質に囚われた社会の中での、女性の虚無感。金に成るが最上の正義。物質主義に遍く支配されたアメリカの映画業界。無意識の偏見に侵されたこの脳よ覚醒せよ!!
こういう作品が数多くの人に行き届かぬ歯痒さ。本作こそ全国公開されるべき。しかし商業主義のシネコンとは当然相見えることなき不条理。しかしこのような自立した映画監督が存在するという事実だけでも、経済至上主義とは対を成す、芸術至上主義的な観点から眺めれば十分に救いである。