《ニナメンケスpresents. 理想像化や露悪的に映される女性の映画の眼差しについて》
注目を浴びる女性監督の中でも、今まで知らなかったニナメンケス。彼女の特集上映が開催され一発目は映画に関するドキュメンタリー。女性だけがやたらエロい撮られ方され続けた映画史に憤りを感じたニナメンケスによる講義の模様となり、引いては男性的業界である映画の眼差しそのものが如何に性的であるか、観点で有名作品を軸に映画史を振り返る。
『めまい』を彷彿させる皮肉なタイトルバックと共にニナメンケスが登場する。
講義のテーマは主にカメラ演出の女性の扱いとなり、覗きの目線の時わざとらしくカメラと観客の目線が同化してることや、性行為シーンでは女性の身体つきをしつこく撮る、スローモーションの使い方取っても男女でアクション的な肉体表現と露悪さを感じさせるいやらしいショットの使い分けなど、日頃からわかっていてもこうやって検証されると不適切だと納得せざるを得ない。ニナメンケスはそういった作品群を排他的に批判するというより、みんなわかっていながら映画だから許されるという蔑ろにされた自覚に目を覚ましてと訴えている。
そう思うと耳が痛くなり、自分もこれまでそれらのショットを喜んで観てた反面全部が性的寓意を含んでるとは言い難いと思えるし、題材に対して女性の裸はゾーニングしきれないだろう。
よって全ての作品が同列には批判できないと思うが、007に代表される見せ物的にエロショットを含む作品らはまあ不真面目だなと痛感。もちろんアートハウスもんにも多々あるが、明らかに不必要なヌードシーンがその手の映画の文化だから、という常識でまかり通りすぎてるので『エクスマキナ』なんかよくアリシアヴィキャンデル同意してくれた、と未だに思うな。
というのを念頭にそりゃあ巨匠の変態率は避けて通れないヒッチコックにゴダール。芸術っぽいを理由には誤魔化せないブリジットバルドーや『ブレードランナー』伝説の力ずくキッスにデパルマは相変わらずヒドい。『キャリー』のチョイスセンスはなるほど気持ち悪いカメラワーク。
これらを男性に置き換えた場合、『ROMA』や『トップガン』で途端にコミカルに見える所はちょっとウケた。
女性キャストの起用率は必然的に観客の理想像を優先された美しい肉体と若さばかり求められてしまうと嘆く場面は興味深く、ではそれに該当しない女性は活躍できる場以上に自信の方を失ってしまうと語り、これこそ小さくない問題だった。
本当なら50年くらい前に作られてほしいドキュメンタリーと思ったが、まあ意義深いものにはなっているだろう。正直、堂々巡りになってく箇所も多くプロパガンダっぽい極論に残念な所もあったけど。