菩薩

ラブ&ポップの菩薩のレビュー・感想・評価

ラブ&ポップ(1998年製作の映画)
4.3
『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』が封切られた1997年7月19日、新宿ミラノ座をはじめ全国の劇場では詰めかけた多くの観客が庵野秀明から「気持ち悪い」の一言を浴びている最中であろうが、ところ変わって渋谷ではインペリアルトパーズの指輪に魅せられた女子高生がそれを買い求める為に「気持ち悪い」おじさん共から金をせしめようと奮闘していた。旧劇で描かれた相互理解の不可能性と個々の断絶は此処でも同様の鋭さを発揮し、庵野(新人)をはじめとする「おじさん」達と決して分かり合えない彼女達との間には当然の事ながら岩井俊二以上の溝が存在しているが、その間を縦横無尽に「盗撮」していくカメラはまさに「ATフィールドを取り外していく様に…(恥)」その世界を一緒くたに丸め上げていこうと躍動する。「対等でいたい」と甘噛みマスカット4粒で稼いだ12万の独占を拒否する裕美であるが、彼女は既に他の3人とは対等でいられない自らの存在を自覚している。「最後までいく」の決意は砕かれトパーズは手に入らなかったが、颯爽と渋谷川を歩く四人の姿にトパーズの宝石言葉同様の輝きと力強さを見る、その背後では彼女達が「のどかな時代だったんだね、今あんなんだったら気分は超ウルトラスーパーベリーバットで死んじゃう」と評する時代のヒット曲が少し外れた調子で垂れ流される。無尽蔵に拡大する男性的リビドーと一点に集約される女性的デストルドー、碇シンジがそのまま成長してしまったかの様な手塚とおる、マイケル・ジャクソンと鳥肌実の中間に位置する強烈な個性の浅野忠信、全てが変わってしまった渋谷の中での三千里薬局、気分的には庵野秀明一世一代のハメ撮りを観ている様で本当に「気持ち悪い」。
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