きゅうげん

ラブ&ポップのきゅうげんのレビュー・感想・評価

ラブ&ポップ(1998年製作の映画)
4.4
原作・村上龍×監督・庵野秀明。
短編集『トパーズ』が80‘sらしい即物的で退廃的な、まさしく“マテリアル・ガール”の性風俗産業を描いたのに対し、続編『ラブ&ポップ』は90‘sに入り、それらがコギャル文化によってストリート化・アマチュア化した援助交際について、流離譚よろしく活写した意欲作です。
庵野秀明の初長編実写作品ですが、その精神性はそんなオリジナルにとても真摯で忠実。

陣野俊史は『ラブ&ポップ』について、フーゾク説教ジジイではなく「関係性に価値を見出すこと」を訴えているのだ、と論じています。
本作のジュブナイル感ある友人関係や理想的な家族関係などの、原作以上の深掘りはテーマに適うものだと言えます。
伝言ダイアルの音声やAVのタイトルなどの狂気的な羅列に、家族や友達の思い出が重なる演出は、その点とっても意味深長ですね。
十八番のテロップ芸で金額や時間を挿入したり、友達の退学という脚色をしたり、“有限性”みたいなものを前景化してるのも、そんなテーマと密接に関わるように思います。


買春相手となる平田満・手塚とおる・浅野忠信などの変態度のドンドン加速する怪演は恐ろしいですし、吹越満のクッキング・サラリーマンも良い味だしてて微笑ましい。
また三石琴乃・林原めぐみ・石田彰のヱヴァ組の登場に庵野ファンもニッコリ(てか声が良すぎてすぐ分かる)、そして河瀬直美や鳥肌実の謎チョイ役出演にはビックリ。

それにしても印象的な連絡通路の学校とか、ディストピアみたいな橋とか階段とか、よくこんな庵野好きのしそうなロケーションをいっぱい見つけてきましたね〜。
BD・DVD以前のレンタルビデオ店とか巨大ツタヤ以前の渋谷センター街とか、時代資料としても貴重な目撃体験ができました。
ラストの渋谷川ウォーキングもすごい。今は再開発で埋めたりライトアップしたりしてますけど、あそこ尋常じゃなく臭くて汚いすからね……。
労いも込めて、夏休みの南国旅行エンドにさせてあげても良かったんじゃ?