きゅうげん

女優霊のきゅうげんのレビュー・感想・評価

女優霊(1995年製作の映画)
4.1
監督・中田秀夫×脚本・高橋洋

撮影所を舞台とする中田監督の素案に、高橋洋氏が「開かずの間と化していた実家の二階」「偶然目撃してしまったTV放映のホラー作品」という、自身の幼少体験から肉付けした内容。

“Jホラー”ブームの火付け役のひとつでありながら、高橋氏は自著にてその幽霊表象を「失敗」と認めています。
確かに、青白い照明で浮かびあがる古典的演出や、歩み寄ってくる・大笑いをするという肉体感など、人間性を超越する表現にまでは至ってないかも知れません。
(音楽の過剰さもちょっと悪さしてる気が……)
とはいえ冒頭シーン、照明機材や梁などのその上の三重と呼ばれるぽっかり空いた真っ暗闇に、女優とともに私も“何か”を幻視してしまったので、中田&高橋コンビのアイデアの勝利ではあります。


高橋氏は『邪願霊』や『ほん怖・第二夜』などの小中千昭&鶴田法男作品に「追いつけ追い越せと焦っていた」と述懐しています。
しかし、“Jホラー”前夜にテレビ/ビデオ企画の『学校の怪談』『ほん怖』にて、鶴田法男・中田秀夫・小中千昭・黒沢清・高橋洋などなど錚々たる面々がしのぎをけずっていたと思うと壮観ですね……。
その後の映画『リング』シリーズ、そして日本ホラー映画史を語るうえで無視できない小品です。

ただ、自身のホラーのルーツを映画制作という物語に落とし込んだ高橋脚本、作品内外が円環的に結びついて映画の世界に閉じ込められたかのような印象も……。
しかしだからこそ、常に“本当に怖い映画”を志向する作品づくりができてるのかも知れませんね。