イージーライター

貴公子のイージーライターのレビュー・感想・評価

貴公子(2023年製作の映画)
4.5
得体のしれないものに追いかけられる。古くはスピルバーグの「激突」、ジャック・ニコルソンのアルカイックスマイルをアイコン化した「シャイニング」、そして「フォーゴ」最近では「最後まで行く」などこの設定は傑作を生み出すスイッチボックスだ。

本作も然り。貴公子然した色白の美青年が主人公を追いかける。どれだけ追いかけてきても汗はかかない。髪は少し乱れるがすぐ手鏡で直す。一体こいつは誰なんだ。

ミステリー仕掛けにかつ息をも付かせぬアクションの連続。一昨年、モガディシュで韓国映画のカーチェイスって何と面白いのだと驚いたがこの作品も負けていない。カーチェイスだけでなく、繰り出されるアクションワンシーン、ワンシーンに魅了される。

勢いに押されて映画を見ているので後で見返せば、多分だが、どこかご都合主義になっている設定もあると思うが気にならない。勢い勝ち。映画のワンシーンワンシーンで作られた慣性力は、うかぶ疑問など押し倒していく。

もう一点。韓国社会の恥部というか乗り越えられなければ行けない価値観を映画は照らしている。こういう卓越した娯楽作でちゃんと社会性を秘めているあたりも素晴らしい。