ハイテク機器の〝ポッド〟にて、働く女性の妊娠出産をアウトソーシングする話。
妻はやり手のキャリア組で昇進も間近。かたや夫は植物学の教師だが、リアルな植物の需要は減る一方で、ホログラムでの代用が推奨され、仕事の先行きも危うい。妻は合理思考で提案型アプリやAIカウンセリングを活用し、夫はナチュラリストでテクノロジーの介在を好まない。
この時代でも、従来的な母体内での妊娠出産もあれば、ポッドでの代理出産も選択できる。だが後者の費用は高額で人気も高く、現在予約待ちの状態。受胎したポッドはセンターに預けることもできれば、自宅に持ち帰り、腕に抱えて過ごしてもいい。夫が抱えれば、妊娠気分を味わうこともできる。
いいことずくめのようだけど、実際にポッドを利用してみたら案の定……夫婦間で/そして夫婦と運営会社の間で、いざこざが起きる。もとの夫婦同士の価値観の相違が、とある「事件」を経ることで落とし所をみつけ、協調・共闘へと向かうことになる。
小洒落た世界内で展開される〝ありえそう〟な大人の寓話。〝ポッド〟そのものの設計デザインやセキュリティ体制など、素人目にも「本当に大丈夫?」と思わせるようなスキや危うさが目につくが、そこらへんは折り込みズミなのかも。逆にそれをガチガチにやると、作劇の自由度が限定されるから。
「妊娠出産ものSF」とはいえカルト映画ではないので『イレイザーヘット』や『ブルード』みたいなゲロゲロ展開にはならず、安心して観ていられる。そこまで深かったり、ショッキングな結末を迎えるわけではないが、役者の演技もツボを得ていたし、適度な現代社会批判が込められつつ、ほっこりとした結末をみせてくれる。
たまにはこんな湯加減の映画も、悪くない気がした。