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ポッド・ジェネレーションのuruchamのネタバレレビュー・内容・結末

ポッド・ジェネレーション(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

キャリアのトラックを走り続けるために妊娠を外部委託する。
不自然な妊娠を訝しげに思っていた父親は、ポッドと過ごすうちに絆を感じていくようになる。
→父親はポッドでの妊娠により、従来の妊娠ではできなかったレベルで赤ちゃんと近づくことができるようになっている。
一方、母親はお腹の大きい妊婦を見て、美しくあたたかいお腹と冷たく固いプラスチックの温度差に、母親としてやっていけるのか不安になっていく。子どもをお金で買うような罪悪感。

「妊娠からの解放」は男女平等に近づくと思いきやフェミニストは抗議する。「子宮に手出しするな!」
職場にポッドを持ち込むと仕事の邪魔だと注意される。妊娠というプライベートの悩みで、生産性の低下を指摘される。
一方「不安や恐怖が存在しないから」意識がなくてよかったと語るセラピストAI。
→人間から人間性を排除して、めざすのはAIなのか?

夜泣きを解決する機械。発達の段階で生じることが単に解決すべき問題として扱われる。
→ペガサス社の技術革新は進み、子を育てる十数年の間にも起こるたくさんの「デメリット」を、親子の愛着を介さずに機械的に解決することになるだろう。そうしてできあがる子どもはもしかしたらわたしたちよりもAIに近づいているかも。その子どもがまた子を育てれば、どんどん人間はAIとの差がなくなっていく?

ポッドで生まれた子は一切夢を見ない。社:副作用は認識しているが、夢は特になくても大丈夫なので問題ない。
→有益でないものはなくてもいいのか?

夢を分析することに意味はない。
→しかし母親の見る夢には潜在的な不安がよく表れている。
本物の自然に触れるのに価値を感じていなかった母親が、夢で赤子を抱いて砂浜を裸足で歩く。赤子のぬくもり、砂の感触。それは今まで感じることがなかった種類の感覚。その後自然に囲まれた場所で産もうと言い出す。
→人間らしさ・自然の価値を取り戻す

一企業に胎児の養育を任せることの危険性。何をされているか不透明。社の意向に沿わなければ遠隔操作されて赤子が人質にされる。
アメリカは教育予算は廃止、ペガサス社が教育に投資している。
→資本主義の中で、統治主体は国家から企業へ?

AIの方が創造性があるから、人間はAIがつくったものを評価するだけ。
→逆転している・・・

ペガサス社の顧客は親ではなく子。「これからは子が親を選べるようになればいいですね」とニヤリ。
→今後どういう風にビジネスが展開されるんだ??全く予想がつかないこわさ。



今年婦人科疾患になったこともあり、映画を見始めたときは妊娠が外部委託できたらどんなに楽か、、、とも思ったけど、映画の中の近未来では資本主義がさらに加速していて、その中で一企業に委託するのはこわすぎる。CEOの笑顔は胡散臭い。
資本主義と妊娠・育児は相性が悪すぎる。変わるべきは妊娠のありようではなく、資本主義だ。
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