怪我によりクラシックバレエのキャリアを断たれてしまう主人公が、新しい身体言語(ホフェッシュ・シェクターのカンパニー)と出合って、純粋な「踊る喜び」を取り戻していく。その回復過程が丁寧に描かれているのと、クラシックバレエにもコンテンポラリーダンスにも敬意が感じられて、とてもよかった。
バレエ、とくに女性「バレリーナ」が主人公のフィクションだと、なぜかカンパニー内での人間関係ぐちゃぐちゃモノ、陰湿なイジメ!閉塞感!みたい話が多くてうんざりしてたから、クラピッシュ監督の軽やかさ、ユーモア、人生への楽観的な感じがよかった。救われる。
コンテンポラリーダンス公演の成功のあとに、幻想としてあらわれる(冒頭バレエシーンと同じ)『ラ・バヤデール』が「影の王国」のコール・ド・バレエ(群舞)というのもよかった。うまく言葉にならないが、クラシックバレエのソロをバリバリ踊る過去の自分ではないところ、そういう「決別」のシーンではないのがよい。クラシックの根があってコンテンポラリーへも融合していく主人公の未来は明るいだろうって思える。
主演はパリオペラ座のプルミエールであるマリオン・バルボーであること、ホフェッシュ・シェクターが本人役で出てる他にも、「ラ・バヤデール」のソロル役はエトワールのジェルマン・ルーヴェ、クラシックからコンテンポラリーへ主人公より先に進路を決めてたアデル役にマリオン・ゴティエ・ドゥ・シャルナッセ、子供時代の教師役にシャーロット・ランソン、亡き母役にミュリエル・ジュスペルギーなど、パリオペラ座のダンサーたちがたくさんいて嬉しい驚きがあった!