『Go Fish』公開から30年、レズビアンの人たちがたくさん出てきて不幸に殺されない映画が全国のシネコンで一般公開されるようになったのだ。ようやくなのかな。それはイーサン・コーエンという名前のおかげなのかもしれないけど。パートナーのトリシア・クックが実質共同監督とのことで、敢えてB級感を全面に出したらしい。主人公を演じたマーガレット・クアリーとジェラルディン・ヴィスワナサンの二人がなんだか可愛らしくいじらしく見えてきて、とても愉快で好ましい作品だなとにこにこしながら観ていた。
正直コーエン兄弟の2010年前後からの作品は好みの方向とは違ってきて『トゥルー・グリッド』以降は全然観てなかったのだけど、本作は『ビッグ・リボウスキ』を彷彿とさせるものがあり好かった。私は「こちら」のコーエン兄弟が好きだったんだ。イーサン・コーエン単独監督は初とのことで、彼は藤子不二雄Aであったのだと本作で知ることとなった。リキッドライティングを使った60年代ドラッグムービー的なシーンをたびたび挟みつつ、クライムサスペンスの要素をとても巧く構成していてダルい面白さがあるし、やっぱりショットも照明も、マッチカットをたびたび使うつなぎも好かった。保守系大統領候補役のマット・デイモンが徹底的に情けない役を引き受けており役者としての度量が試される(かも)。