ひろぱげ

シークレット・サンシャイン 4K レストアのひろぱげのレビュー・感想・評価

4.3
どうやったらこんな脚本思いつくんだろ?
精神科を退院したての人に対して「(カットの途中で美容室出てきちゃうなんて)あんた気は確かなの?・・・あら、私ったら・・・。」みたいな凄いセリフ、普通書けないよね。

イ・チャンドンはどれもタイトルが秀逸。
密陽という名の韓国の地方都市=「シークレット・サンシャイン」なわけだが、全編に渡る深いテーマも同時に込められている。
それにストーリー運びが上手すぎる。一箇所も不自然な場面がない。

主演のチョン・ドヨン、冒頭→あの事件の最中→事件後→入信後→面会後→退院後と、その状況ごとに表情がゴロッと変わるの凄いし、恐ろしい。それに対して一貫してニュートラルなソン・ガンホ。(さすがにすっぽかされた後のシネの鼻歌には怒りを顕わにするが、)下心ありありなのに付かず離れず、どこか浮遊している感じがする。(彼こそが神なのか?)

シネは不幸の連続に見舞われるが、彼女のキャラクターにも色々と難ありで(引越の挨拶でいきなり「インテリア変えた方が良いですよ」とか言っちゃだめだし、かなり傲慢不遜で、都会から来て虚勢張ってる感じが田舎の人々には鼻についたりする)、ストーリーの展開毎に「あーあ」と思ってしまう。しかし、これもまた人間らしさ全開で、見ている方としてはギリギリしたりヒリヒリしたりする。野外集会であのCDを流しちゃったりとか、青姦のシーンで天を睨みつけ「天にまします我らが父」たる神に喧嘩売る辺りはこの映画の白眉だな。

「苦しい時の神頼み」と言うが、神とは人間の都合など関知しない。どんな理不尽で無慈悲な出来事も、神の思し召しと思うか思わないか、それすら関知しない。人間が勝手に神に何かを期待しているだけなのである。その期待を見事裏切られるのがシネなのだった。

ラスト、密やかな陽だまり「シークレット・サンシャイン」をカメラが追う。素晴らしいエンディング。
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