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プリシラのOmizuのレビュー・感想・評価

プリシラ(2023年製作の映画)
3.8
【第80回ヴェネツィア映画祭 女優賞】
『ロスト・イン・トランスレーション』ソフィア・コッポラ監督の新作。ヴェネツィア映画祭コンペに出品され、主演のケイリー・スピーニーが女優賞を受賞した。

ソフィア・コッポラ作品は『ブリングリング』『マリー・アントワネット』以外好きになれなかったのだが、これは久々に良かった。会心の出来なのではないかな。

なんといっても主演のケイリー・スピーニーが素晴らしい。純朴な少女から大スターの妻へという変化を外見的にも、そして内面的にも見事に表現していた。

何も分からず大スターに好かれた少女、そりゃ精神崩壊してしまうわ。エルヴィスによるDV、暴言、周りからの嫉妬、浮気の噂など様々なことにプリシラは直面していく。

まるでそれに耐えることが「大スターの妻」である理想を押しつけられるように。しかしラストは「そんなに知ったこっちゃない!」とばかりの疾走を見せる。そこで流す曲もソフィア・コッポラらしくていい。

全体的に陰鬱な雰囲気が漂うが、「大人の女性になること」をプリシラというキャラクターを通して見つめ直すような作品になっている。単なる伝記映画に留まらない、現代の女性映画でもある快作。
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