年齢も立場も異なるユダヤ人3人の視点による、
アイヒマンに、そして歴史に触れた市井の人々の過去と現在と未来との丁寧な物語り
スーパー16mmでの撮影
映画として、撮影が良く、芝居が良く、プロットが良く、音楽の使い方も効果的で、退屈や偏向とは無縁なおもしろい群像劇映画だったので、人にも薦めやすい
宗教上火葬のないイスラエルで、
その者を如何にして灰としたのか
火葬炉の製作に携わることになる少年はリビアからの移民、
その国でアラブ系は蔑まれている
少年もまた手癖が悪いが、彼なりの生きる術でもあり、負の連鎖である
彼は、技術知識と大人より小さな体軀とを駆使して活躍の場を得る
工場長は独立戦争の雄であり、ホロコースト生還者の工員もいて、工場は1962年当時のイスラエルの縮図でもある
アイヒマンを護衛する者はその重責に自らを追い込んでゆく
傍らのアイヒマンは‘普通の人’だ
ゲットーで少年時代を過ごした者は証言者となっている
この、ミハの正面からとらえた画と台詞とが白眉である
「80回鞭打たれたことを信じてもらえなければ、それは81回目の鞭打である」と、
「忘れられたくない」と
語り部の覚悟と輝きとの眼差しを観客は受け止める
滑稽さや温かみのバランス感覚が秀逸で、
題材に構えすぎることなくなんとも観心地が良かった
ダヴィッド少年の握り拳とミハの眼差しを
忘れることは出来ない
尚この作品は、ホロコーストの記憶を記録したクロード・ランズマンに捧げられている