ちゅにちゃん

月のちゅにちゃんのレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
3.3
2016年に神奈川県の精神障がい者施設で実際に起きた事件を題材に描いた辺見庸の小説の映画化。施設で働く主人公が、「コミュニケーションの取れない障がい者は生産性もなく、生きる価値がない」と言って次々と入所者を殺害していくシーンはあまりにも残忍で衝撃的。社会から隔離され、閉じられた施設で日常的に行われる職員による虐待や身体拘束の実態も生々しく描かれていて驚く。労働の価値が生産性で示され、生産性の高い労働者は高額の報酬を得る社会。しかし、障がい者も健常者も同じ一つの命。家族にとってはその存在自体に価値がある。笑顔や仕草がどれ程の喜びを家族にもたらしてくれるのか。人間の価値は本来プライスレスなもの。本作は、プライスレスなものに生産性という誤った尺度を適用し、簡単に人を切り捨てて行く社会のあり方に警鐘を鳴らしている所が興味深い。