くぅー

月のくぅーのレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
4.2
【my映画館2023 #56】

“心がない。”

»重度障害者施設で働き始めた元作家の女性は、しばらくして職員による入所者への心ない扱いや暴力を目にするが、それを訴えても聞き入れてもらえず…やがて知り合ったある男性職員の思考に変化が起きていく。

はい、個人的に前日『波紋』を見て、人間の暗部にニヤリとしたんですが…今日は全く笑えずに、“刃”紋がグサリグサリの余韻。

いや、これは答えを出せない難題がまず出てくるので…“なぜ生きるのか?”で、とりあえずそこで揺らされてしまう。

で、生きることに関して、意思表示できない人に答えられないから排除という、短絡的な思考に陥ったのが問題だけど…そこまで陥ってしまったのは本人だけの問題だから、と見て見ぬふりはできない訳で。

うん、欲望を持つ人間は月の様な光と闇を抱えて生きていくのは当然で、自分も見たくないコトは見ないという選択は場合によってはこれからもしてしまうだろう…が、これからも安易にするのか?と突きつけられた感じで。

にしても、石井裕也監督には脱帽…あの衝撃的な実事件をモチーフにした原作をここまでの映像作品に仕上げた手腕は流石。

なお、俳優陣では、まずは宮沢りえ…この難役を全身全霊での熱演、大変お疲れ様でした。
磯村勇斗…これまたキツい役に憑依的な怪演を披露。
オダギリジョー…今回は静かな好演を見せます。
二階堂ふみ…迷いながらも核心を突く役をきっちりこなしてます。
さらには、板谷由夏に高畑淳子に、モロ師岡に鶴見辰吾に原日出子らの芸達者なサポートも良き。
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