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ダム・マネー ウォール街を狙え!のsinginggizmoのレビュー・感想・評価

3.7
2021年、つい最近起こった実話を基に映画化された本作。
まず映画化のスピード感がすごい。

株やら金融関係は無知で超絶苦手な分野で、資本主義の中の弱者中の弱者なため、恥ずかしながら当該事件があったことを1ミリも知らず。

キャラクター設定や俳優さん達の演技が良くて、脚本もテンポよくコメディタッチ、あくまで庶民とエリート層の対立が主題なので、金融に無頓着な者にもメッセージが伝わりやすい作りで、ありがたい。

まじめに金融市場の話をされたら、秒で眠くなる私でも楽しめるエンタメ作品。

主人公を演じるポール・ダノ。
猫のTシャツ&ハチマキで配信する姿が似合いすぎて間違いなくはまり役なのだが…
ピート・デヴィッドソンがまたクズな弟ケビンにさらにはまっていて、とても上手かった。
なんだかんだで信頼し合っていて、仲良しな兄弟が微笑ましい。

セス・ローゲン演じるメルビン・キャピタルのゲイブ・プロトキンは、ウォール街のエリート層の代表として、皮肉たっぷりにいじられていて笑えた。
事件後のオンライン公聴会で話す自身の生い立ち、どこを背景にしてカメラに映るか、いかにエリートな印象を与えないように操作するか弁護士に助言されてるシーンが大爆笑。
これはさすがに映画独自の演出?

弱い立場の個人が同じ信条で団結し(正直、みんながそうではないとは思う)、強い立場の組織や権力に一矢報いるストーリーは気持ちがいい。
キース・ギルはゲームストップという企業の価値を信じて投資していた。
それを広めたくて個人の投資家にyoutubeで訴えた結果、賛同した人々が株を買い、株価が急騰し、結果的に利益を得た。
一方で、ヘッジファンド側はゲームストップの株価は将来的に下がると見込んで、大量に空売りしていた…が予想外に急騰したため、多額の損失が出た。

エリート側は、すでに巨額の資産たんまりなのに、極端な利益追求は何のため?
それは本当にきちんとした企業の評価につながってるんだろうか。
そこで働いてる人達が見えてるんだろうか。
ヘッジファンド、エリート層の利益追求ムーブにより、失業したり犠牲になってる人達がいて、格差が過剰に広がってしまうとしたら、そういうゲームだから、もう社会に必要とされてない企業ってことだから、しょうがないとは割り切れない。
そこには明らかに一方の利益しか考えていない意思が働いている訳で。

やりようによっては、個人投資家がヘッジファンドに対抗できる環境になって、対等にチャンスがあるのは良いことだけど、ゲームストップ株みたいな事が起きないように組織側に有利なルール変更とかなきゃいいなーとも思う。
株式投資には無縁の自分としては、破綻する時は勝手に破綻せいって感じで、全然そっちのルールで戦ってない側を巻き込むのはやめてほしいという気持ち…けど資本主義社会にいる限り無関係ではいられないんだろうか。
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