はる

中洲のこどものはるのレビュー・感想・評価

中洲のこども(2023年製作の映画)
4.5
主人公の蓮司(れんじ)は無戸籍で学校にも通っていない7歳の少年でした。福岡、中洲の歓楽街で働く両親は蓮司に無関心。毎日数百円の食費を渡し、生活に必要な水を汲みに行かせていました。

水汲みが日課って、アフリカじゃあるまいに。
にわかには信じられない事が地元中洲で起こっていました。
大きいバケツを抱え、自分を中洲国(なかすこく)の大統領と自称し、手作りのパスポートを持ち歩く蓮司の瞳が胸に突き刺さりました。

この作品は、中洲で働く人々の暖かい人情を織り交ぜながら、日本に1000人いると言われる無戸籍児の問題を取り上げています。

これもまた、コロナ禍で制作の中断を余儀なくされた作品のひとつです。撮影を再開しようにも主役はすくすく育つ子ども。
絵が繋がらないという大きな難題を乗り越えて完成された、奇跡の作品と言っても良いのではないでしょうか。

主役の古賀迅人(はやと)くんの代役は弟の 蒼大(そうた)くん が引き継いでいます。
「お兄ちゃんのために」とバトンを受け取りましたが、元々演技に興味がなかった蒼大くん、カメラを向けられて固まってしまったことも多かったとか。
それでもスタッフ達は文句を言わず見守った、という制作の裏話を辻仁成監督のブログで知りました。

まずはこの兄弟の頑張りをねぎらいたい気持ちで観に行きましたが、作品自体も良かった。世良公則や佐藤浩市らの大御所が中洲の風景に染まっているのも嬉しい。

鑑賞後の大ヒット御礼舞台挨拶ではお兄ちゃんの迅人(はやと)くんが観客たちにさらなる来場を熱くお願いしていました。
8月24日、福岡出身の辻監督がコンサートのために帰ってくるので、それまで劇場公開を続けたいそうです。

現在の上映は中洲大洋劇場の1館だけですが、鑑賞後すぐに聖地巡礼出来るという楽しみ方も出来るし、今後はは夏休みのお子様連れでも劇場がにぎわうのでは?
何なら自由研究のテーマを無戸籍児にしても良くないですか?

昨日は、作品だけでなく制作の裏話、中洲の再生など多くの感動体験が出来ました。
はる

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