YAEPIN

ボブ・マーリー:ONE LOVEのYAEPINのレビュー・感想・評価

ボブ・マーリー:ONE LOVE(2024年製作の映画)
4.2
近年立て続けに公開されているレジェンドミュージシャン伝記映画シリーズ。

伝記、といいつつデビューまでの若年期はバッサリオミットされ、回想シーンで触れられる程度に留まる。本作は、銃撃された1976年から『エクソダス』をリリースする1977年のほとんど1年強くらいにフォーカスしている。
これを不完全に思うファンもいるとは思うが、個人的には制作陣の伝えたい点に集中することで、映画の軸がブレずに良い選択だと思った。
ただ、タイトルにもある"One Love"のライブシーンが無いのには驚いた。本人原理主義者への目配せだろうか。

また、他のレビューを読んで、作中の頻出単語である「ラスタファリ」「ジャー」「ザイオン」などの単語について、意味や概念が何も説明されていないことに気がついた。
私はたまたま意味を知っていたから観ている時スルーしていたが、あとから気づけば思い切った不親切構成になっている。
とはいえ、「分かってるでしょ」と上から目線になっているのではなく、ボブ・マーリーのスピリットを感じろというメッセージと解釈した。
地面スレスレのドレッドヘアの指導者たちと火を囲みながらマリファナをブファーーとふかすシーンの絵力が大きく、その精神性やライフスタイルを「感じる」ことができる。

あとはもう映画の構造というよりも、音楽のパワーに圧巻されてしまった。
レゲエにはどこかのんびりとしたイメージを持っていたが、パーカッション(ナイヤビンギと言うらしい)の力強いビートで心が震えた。
特に"Get Up, Stand Up"と"War"は、ジャマイカの当時の情勢が描かれている中だとよりダイレクトに身体に刺さる。
伝説的なライブシーンは映画でよく見かけても、いいグルーブにならずにリハが行き詰まるシーンはあまり見たことがなく、リアルな制作過程が興味深かった。
まるで神からの啓示のようにボブ・マーリーに降り、そこからバンドのソウルの積み重ねで"Exodus"が生まれる瞬間は非常に神聖だった。
YAEPIN

YAEPIN