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⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎のYAEPINのレビュー・感想・評価

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)
4.0
話題作ということで今更アマプラで観た。

非常に作り込まれたアニメーションで見応えがあった。
戦後まもない時代背景によって、登場人物の多くが煙草を吸っているが、その煙の表現が凄まじかった。
煙が立ち上り、狭い列車の中や家の中に充満する様子が繊細に描かれていた。
そして煙は視界を曇らせ、妖しい存在を呼び起こすアイテムにもなっている。

また、アクションシーンも線が震えるような表現で驚いた。動きはダイナミックで主に縦の動きが激しいのだが、ゲゲ郎が着流しということもあり、優雅にすら見えた。

口コミでは見た目にも精神的にもグロテスクという評判だったが、本作が大いにオマージュしたであろう『犬神家の一族』や、他の横溝正史作品のおどろおどろしさや醜さには及ばないように思えた。

本作には、反戦、ムラの家父長制と因習、人体実験など、妖怪以外に炙り出される要素が多く、それぞれ一筋縄ではいかないテーマであるだけに100分の尺では不完全燃焼になっている。
正直龍賀の娘のエピソードまでで十分スペクタクルがあったし凄惨だったため、それを中核に持ってきても良かったと思う。
その一件が片付いたら、ゲームかのようにすぐ次のステージに進んでしまっているので掘り下げが足りないように感じた。
生まれた頃から家父長制に人権を踏みにじら続けてきた少女の怒りが妖怪となっているのに、それを倒してハイ終わり、ではとても浮かばれない。

血液銀行の水木と謎の男ゲゲ郎の2人のバディ感も今ひとつ伝わりづらかった。
もちろん頭では彼らが協力関係にあることは分かるが、そこまで信頼し合うに足るほどの説得力はない。
一方ところどころで、腐女子的な「フカヨミ」をしうるカットが差し挟まれており、具体的な心理描写よりも、「すらっとした若い男性が2人揃ったら即ちBL」といったお決まりに、彼らの関係の説明を任せているようにも見えた。
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