Kz氏

アントニオ猪木をさがしてのKz氏のレビュー・感想・評価

アントニオ猪木をさがして(2023年製作の映画)
3.3
プロレスファンでも猪木ファンでもないのだけど、70年代から80年代の新日本プロレスは勿論、60年代日本プロレスBI砲から90年代スポーツ平和党党首まで、いつも視野の中にいた人なので、このドキュメンタリーを見た。

ドキュメンタリーと言い条、猪木に元気をもらった人の80・90・00年代3本の短編ドラマが差し挟まれる。
プロレスがマイナースポーツであったのは、ヤラセの見世物ととらえられていたからで、NHKがプロレス中継から撤退したのもそのためだ。だから、プロレスラーの出演者は、決して「ショー」という言葉を使わないが、「虚実」という表現はする。「虚」を「実」とするために、モハメド・アリとの異種格闘技戦も、ノールール時間無制限無観客のマサ斉藤との巌流島の戦いも行なわれたのだという。
ドキュメンタリーにドラマが挟まれる必然がある。

スポーツ平和党の猪木は、90年のフセインによる日本人人質事件に際し、外務省の非難を押し切って、イラクで「平和の祭典」を行い、在留日本人と全人質の解放を勝ち取る。同年にキューバでカストロと意気投合し、95年平壌でのプロレス興行を開催以降、八方塞がりの北朝鮮との外交窓口のひとつとなっていた。

今、トランプのウクライナやガザに対する火事場泥棒の振る舞いを見ると、「平和」は虚構ではないかと思えてくる。SNSで嫌がらせの虚言をまき散らす者はいても、世界平和の「虚」を「実」に転じる破天荒な人物は存在しない。
……と、アントニオ猪木が見えた作品でした。
Kz氏

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