MasaichiYaguchi

ほかげのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ほかげ(2023年製作の映画)
4.1
終戦直後の闇市を舞台に絶望と闇を抱えながら生きる人々の姿を描いた本作は、世界のあちこちで戦争や内戦で戦火が広がっている今年、終戦後の人たちが抱えるトラウマや闇を浮き彫りにし、その先にある仄かな希望を滲ませる。
焼け残った小さな居酒屋に1人で住む女は、体を売ることを斡旋され、絶望から抗うことも出来ずに日々をやり過ごしていた。
そんな或る日、空襲で家族を失った子どもが、女の暮らす居酒屋へ食べ物を盗みに入り込む。
それ以来、子どもはそこに入り浸るようになり、女は子どもとの交流を通して仄かな光を見出だしていく。
朝ドラ「ブギウギ」の趣里さんが主人公の女を繊細かつ大胆に演じ、片腕が動かない謎の男役で森山未來さん、戦争孤児役で「ラーゲリより愛を込めて」の子役・塚尾桜雅くん、復員した若い兵士役で「スペシャルアクターズ」の河野宏紀さんが共演している。
「ブギウギ」と本作は時代背景でオーバーラップするところがあるが、本作の女と朝ドラのヒロインは、陰と陽、天と地ほどに違う。
しかしタイプは違っても、両作品には傷付いた人々に対する癒し、祈りのようなものがあると思う。