さかもと

ほかげのさかもとのレビュー・感想・評価

ほかげ(2023年製作の映画)
3.0
塚本晋也監督いわく、『野火』というタイトルにある「火」は戦場の火であると。
今作『ほかげ』は漢字にすると「火影」でありここでの「火」は戦場により焼け野原になったあとの生活に灯る小さな火であり、その影で生きていく人々の物語であると。

『野火』で強烈なまでに戦争の悲惨さを描いたが『ほかげ』では戦後生き残った人々の悲惨さを描いた。
共に戦争について考えさせられるのは言うまでもない。

『ほかげ』では日本兵のPTSDや戦争遺族・戦争孤児の悲惨な生活、そして戦時中上官による尊厳を踏みにじる異常な命令を受けた男のその後が描かれる。

戦争は終わったあともずっと国民を苦しみ続ける。

様々な経験を経て「銃声」の意味が変容した少年がほんの小さな希望だ。

戦争は絶対にいけないという当たり前のことなのに、なぜか人はこの想いを薄れさせていく。
だから今当たり前のように使っている火が、どのようにして当たり前になったのかだけでもこの映画を観て考えてみたい。
さかもと

さかもと