さかもと

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎のさかもとのレビュー・感想・評価

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)
3.0
妖怪漫画の金字塔『ゲゲゲの鬼太郎』をなぞりつつ敗戦国日本のおぞましさを描いています。
もちろんいまだに続いている敗戦国としての現代日本をも標的にしていて、老人に食い物にされ続けている我々にとって、この作品が発するメッセージを身に染みて痛感することでしょう。

「M」と呼ばれる製剤(おそらくヒロポンのことか)で不眠不休で働き国力を上げようとする様は、エナジードリンク「M」をがぶ飲みして働き続ける現代人と重なります。
孫の身体を乗っ取る姿などは超少子高齢化で年金を搾り取り若者の自由を奪っているようにも映ります。

作品は鬼太郎愛が盛り込まれていて、ファンであればすごく高まるのではないでしょうか。
リモコン下駄の活躍やちゃんちゃんこ完成、そしてエンドロールに流れる主題歌アレンジなど細部に至るまで作り込まれています。
『墓場鬼太郎』の前日譚という位置付けも、いわゆるオリジンものとしての楽しみ方が出来ます。

物語としてもわかりやすく構成されており、伏線回収と言える冒頭のゴムボールのようなものや、殺人事件の犯人の意外性と動機の悲しさ、黒幕の醜悪さ、目を惹きつけるアクションシーンなど映画単体として見ても満足が行く作品です。

「社会批評」「鬼太郎愛」「映画としての質」と、この3つがうまくかけ合わさった映画だと感じました。


新宿で鑑賞したのですが満員で、人気の高さがうかがえます。
より多くの方にご鑑賞いただきたいですね。
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