ゾンビだらけの島を舞台にサバイバルを楽しむオンラインゲーム「DayZ」。「生存」が主目的なこの世界にログインするプレイヤー達はそれぞれ異なった意図を持ってロールプレイを楽しんでいる。殺戮、統制、探検。現実と仮想世界に折り合いをつけているようで曖昧な境界線上にいるような人達に密着した一風変わったドキュメンタリーが本作。多々に見られるショットの美しさに惚れ惚れ。
仲間と協力して生存に精を出す者が大半ではありますが、この世界で安寧や未知を求め探検する人や異形の神を崇める人、「リアルプレイヤー」を食料兼拷問用に捕獲したり縄張りで勝手するプレイヤーを殺害したりする強欲に暴力を奮う集団といった、実績達成が目的でなく誰に強制されるでもなく自由に演じる癖のあるプレイヤー達の生の声は淡々としていながら偽りの無い誠実さを感じます。「善グループと悪グループが大戦争!?」「あの時のあいつがピンチに助けに!?」みたいなドラマチックなことも伏線回収もカタルシスも無いのでそういう起伏のある面白さは期待しない方がいいです。都合よく言い換えると誰に対してもフラットにインタビューするスタイルは特定の誰かを上げ下げするでもないですし、ヤラセ感もほとんと感じません(脚色するならもっとストーリー作ってエンタメ盛るよね)。キャラのテクスチャは流石に「ゲーム」感バリバリですが背景に関しては遠目から見たら現実と錯覚しないでもない場面が多々(特に水のせせらぎとかスゲー!って思いました)。キャラはゲームだけど背景は現実感あって、世界はゾンビだらけでプレイヤーの行動は非現実的ながらキャラを動かしているプレイヤーの存在を意識すると否応にも現実を意識させられるしリアルの裏返しを滲ませるプレイヤー達の語り口は現実感…という不思議な感覚。完全にゲームに依存した廃人レベルの人が出てこない分プレイヤー達の現実と仮装の境界線がうっすら感じ取れたような気が。
「DayZ」に限らず全てのオンゲ、またゲームに限らずリアルな日常と違う自分を持つコミュニティへの帰属意識を持つ人にも訴えかけているような一作。シュールなユーモアに淡々とした非日常映像、退屈と眠気に襲われてもしょうがなくはある。小さい画面だとロールプレイのゲーム実況感に埋もれてしまうようにも思えまして、そういった点で言うとシアターのでかいスクリーンで観る価値はあるかもしれませんね。本作で「コロナ禍」という非日常イベントに触れていてのが面白いポイントでした。