記録
ユスターシュの苦悩や絶望は、この映画のためにあったのだろう。最も純粋な劇映画に接近し、そして最も美しく、苦しい映画であるといえる。彼としては初のカラーでありながら、これ程までに豊かな光線を撮れるとは、本当に素晴らしい。
『ママと娼婦』でもみられた映画の停滞は、ここでは全く違う機能を有しており、記憶の回顧として新たに意味を持つ。
本当に時が止まったかと錯覚してしまったあのキスシーン、あれは奇跡だと思う。ストップモーションやスローモーションに頼らずとも、周りの空間・時間を停止させてしまっている。この奇跡はもう二度と誰も撮ることができないだろう。
こんなもん観てしまって冷静になれるわけない。この感情は言葉にすればするほど遠のいてしまうのでもう閉口します。
ユスターシュはこれを撮るために生まれてきたのかもしれない、文句なしの大傑作。
2024,237本目 9/5 BluRay